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キセキノテイオー

キセキノテイオーという馬を知っているか。

2003年8月に北海道を襲った台風の影響で、馬産地日高では川が氾濫。いくつかの牧場が丸ごと流される被害に遭った。

流された牧場のサラブレッドはほぼ全滅だったのだが、その中で、数キロ流されながら生還した小柄な牝馬がいた。この馬は台風で流されたことに由来され、キセキノサイクロンという名前が付けられる。

競走馬としては4戦していいところがなかったものの、その存在自体が奇跡とも呼べるこの馬に、2013年春、現役時代何度も骨折しながら、不死鳥の如く復活を繰り返した歴史的名馬トウカイテイオーを交配。

トウカイテイオーはその数カ月後、2013年夏に亡くなった。翌年生まれたテイオー産駒はわずかに2頭。

そのうちの1頭が、このキセキノテイオーなんだ。

生まれた経緯がすでにドラマチック、競馬の醍醐味の詰め合わせみたいなキセキノテイオーが今、7歳にして現役デビューしようとしている。

体格から競走馬デビューせずに乗用馬となりながら、7歳にして現役デビューは異例どころの話ではない。マスクも長い間競馬を見ているが、記憶にない。昨年秋の乗馬長距離レースで上位に入ったこともあって競走馬デビューする。

競馬を知らない人間もいるかもしれないから説明すると、サラブレッドはみんなデビューできるわけではない。地方競馬には能力試験という制度があり、基準のタイムをクリアしないとデビュー自体出来ない。

正直なところ普通に走れば多くの馬がクリアするタイムではあるのだが、7歳馬、人間で言えば40代手前くらいだろうか。それまで乗馬だった馬が、『競走馬』となるのは非常に難しい。

若い頃陸上選手で、一度辞めて現役復帰ならまだ分かる。陸上競技をそもそもやってこない40代手前の人間が、陸上競技会にデビューするようなものだ。

さすがに一度目の能力試験は落ちてしまったのだが、2度目の能力試験で合格。来月競走馬デビューする。

はっきり言ってしまえば勝てないだろう。離されて負けてしまうと思う。能力試験の合格タイムはギリギリ。いくらなんでもここから勝てるほどこの世界は甘くない。

それでも競馬を仕事としている側から見ると、これは歴史的な出来事なのだ。

デビューするだけで競馬史に残ると言っても過言ではない。

まさに存在が『奇跡』。俺たちは来月の門別で、奇跡を目撃することになる。

今日水曜は帝王賞。

現役時代トウカイテイオーとしのぎを削ったメジロマックイーンの血を引く、マルシュロレーヌの走りに注目したい。

Posted by 金色のマスクマン

RA&NARでルチャリブレ。人生何もかも見えなくなっても馬場だけ読めればいいじゃない。ガキの頃から競馬漬け。気が付いたらば専門誌記者、副業禁止の社則だけれど、知識をマネタイズしたっていいじゃねえか。そう教えてくれた兄貴は @kiss0fthedrag0n
大丈夫。明日も競馬はどこかであるぜ?

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